重い病気と長い間つきあい続けていると、本や雑誌の中でふと目にした言葉から、思いもかけない励ましをもらうことがあります。私が覚えているそうした言葉、闘病者のこころを鼓舞してくれるような、ともし火のような言葉を紹介しようと思います。まず、その1として、アルコール依存症者のための自助グループAA(アルコホーリクス・アノニマス)でよく使われている「ニーバーの祈り」という詩です。下記に原文、和訳を記載します。
― もくじ ―
【ニーバーの祈り】
【解説】
【闘病時の情況と重ね合わせると】
ニーバーの祈り
- Serenity Prayer -
Got, grant me the serenity
to accept the things I cannot change,
the courage to change the things I can,
and the wisdom to know the difference.
神様私にお与えください。
自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを
変えられるものは変えていく勇気を
そして二つのものを見分ける賢さを
解説
ニーバーの祈りは、アメリカの神学者であるラインホルド・ニーバー(1892-1971)が作者とされる短い詩です。この詩は、アルコール依存症克服のための組織である「アルコールホーリクス・アノニマス」や、薬物依存症や神経症の克服を支援するプログラム「12ステップのプログラム」で採用され、世に広く知られるようになりました。
下記にオリジナル版を記載します。
神よ、変えることのできないものを静穏に受け入れる力を与えてください。
変えるべきものを変える勇気を、
そして、変えられないものと変えるべきものを区別する賢さを与えて下さい。
一日一日を生き、
この時をつねに喜びをもって受け入れ、
困難は平穏への道として受け入れさせてください。
これまでの私の考え方を捨て、
イエス・キリストがされたように、
この罪深い世界をそのままに受け入れさせてください。
あなたのご計画にこの身を委ねれば、あなたが全てを正しくされることを信じています。そして、この人生が小さくとも幸福なものとなり、天国のあなたのもとで永遠の幸福を得ると知っています。
アーメン
闘病時の情況と重ね合わせると
闘病する者が出会う、告知、体の不調、新たな社会適応、先行きの見えない未来。闘病者は、経験のない不確実な状況下に置かれてしまいます。そうした中にあると、ニーバーの祈りにある「自分に変えられないものを受け入れる落ち着き」という箇所がこころに響きます。簡単なことではないかもしれませんが、少しでも受け入れられた際には、希望の灯りがこころに灯ります。
また、病気を背負いながらも、できることはしっかり続けていくことの価値を、「変えられるものは変えていく勇気」というところに私は感じます。そして「ふたつのものを見分ける賢さ」とは、苦しい状況下、理性の眼差しを持って判断していくことの大切さを教えてくれているのだと思います。