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2つの映画を比較・検討し、闘病のヒントを探ります ― ジョーとドニー、ふたりのメンターに注目!

こんにちは、ジョニー・ジョニーです。今回の記事では、これまでに取りあげた映画から2作品をピックアップし、それぞれの作品に登場したふたりのメンターについて比較・検討してみることにしました。

ひとつは映画『サウンド・オブ・メタル』です。突然、耳が聞こえなくなってしまったドラマーの物語。メンターとなるのは、ろう者の支援コミュニティ―のリーダー・ジョーです。

もうひとつは、実話の映画『ドント・ウォーリー』。交通事故で車いす生活となった主人公が、紆余曲折を経ながら再起を図る物語です。メンターはAA(禁酒会)の指導者・ドニーです。

メンターとしても、ひとりの人間としても魅力的なジョーとドニー。主人公との関わりから見えてきたのは、メンターとしてのふたりに共通する6つの要素でした。

その6つの要素とは、

①優れた人間性 ②ロールモデル ③自己開示力 ④笑いとユーモア ⑤優しさと厳しさ ⑥高い専門性

詳細は本文で…それでは。

 

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もくじ

 

1.映画『サウンド・オブ・メタル』の支援コミュニティのリーダー・ジョー


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(1)リーダー・ジョーの主人公との関わり

ヘビメタバンドのドラマーのルーベン。ライブ活動中に突然、聴力を失いました。意気消沈するルーベン。

 

恋人の勧めで、ろう者の支援コミュニティを訪れます。そこでルーベンは、施設のリーダー・ジョーと出会うことに。

 

ジョー自身もろう者で、もとはアルコール依存症でした。つまりルーベンとは、ピアの関係です。施設では、ジョーの作ったろう者支援のさまざまなプログラムが行われていて、子どもたちのための学校まであります。

※ピア(peer):同じ問題、課題を抱える仲間 (例)ピアサポート

 

ジョーはルーベンに話します。ここで解決できるのは耳ではない、頭だと。つまり聴力は取り戻せないが、ものの見方は変えられるということ。

 

ジョーはルーベンに、ここでろう者としての地盤を固めろと。ただし、ひとりでがんばってもらうスマホも車もなしだと言って、スマホとキーを預かります。

 

施設では、多数の老若男女のろう者が暮らしています。みんな、音のない世界を受け入れ、むしろ自然なこととして生活しています。ジョーはルーベンに、入所への覚悟を求めたのです。

 

ルーベンは入所しましたが、なかなか施設になじめません。そんなルーベンにジョーはある課題を与えました。

それは、毎朝5時、テーブルとイスのある部屋にコーヒーを用意するから、君はただそこに座っていてほしい。もしそれができなくなったら、テーブルにある紙とペンに向き合ってほしい。文字なら何を書いてもいいから、もう一度座っていられるまで、とにかく書き続けてくれと、ジョーはルーベンに求めました。

 

ルーベンはこの課題に、のっけから対応できません。じっとさえできずに、叫んだり、暴れたり…。ですが、日々、課題を繰り返すうちに、心の在りように変化が。ある日、課題を終えたルーベン、さっぱりとした表情で窓の景色を眺めます

 

この課題のクリアが、ルーベンの気持ちの転換点となります。コミュニティの仲間と打ち解け合い、子どもたちとも優しく触れあえるように。音楽クラスで太鼓の指導を任されるようにも。

 

こうしたルーベンの進歩にジョーは目を細めます。施設にこのまま残って、私のプログラムで働いたらどうかとルーベンを誘いました

 

しかしルーベンは、何とか聴力を取り戻して、恋人ルーとまた暮らしたかったのです。ルーベンは耳のインプラント手術をするため、ジョーに断りなく、勝手に施設外へと。手術後、ルーベンはジョーに謝りますが、もはや遅く、ジョーから即刻、退去するよう命じられました

 

 

(2)メンターとしてのジョー

リーダーのジョーは、ルーベンと同様にろう者であり、依存症の経験もあります。そうしたピアとしての繋がりは、支援する側とされる側の絆を強くします。今、ルーベンが直面する困難をすでに乗りこえたジョーの存在そのものが、ルーベンの希望です。

 

最初の面談、ジョーは自分の辛い過去をジョークを交えて笑い話に。自分を信頼してくれて大丈夫、というジョーなりのアピールでしょうか。ルーベンとの心の距離を引き寄せました。

 

さらにジョーは、スマホや車の使用禁止や勝手な外出はできないことをルーベンに告げ、入所に当たっての覚悟を求めました。施設責任者としての厳しさも持ち合わせるジョー。そんなジョーの指導に、ルーベンは少しひるんでしまいます。厳しさと優しさの両面をあわせ持つジョーの在り方。施設リーダーとしての大事な要素です。

 

入所直後の食事会。他の入所者と気さくにふるまうジョーの姿に、ルーベンはホッとしたのではないでしょうか。ジョーの温和な人柄が垣間見れるシーンでした。

 

ジョーの特質をまとめると、利用者の気持ちに寄り添う誠実な姿勢、自分の辛い過去も率直に語れる自己開示力。場が変われば、笑顔で冗談も交わすフランクさ。また、ろう者支援プログラムを遂行できるジョー。支援者としての専門性も確保されています。

 

メンターとしての指導力、厳しさ、それと優しさ。こうした力量を持ち合わせる施設リーダーのジョーは、ルーベンの理想的なメンターとなりえる人物です。何より、ジョーがルーベンと同じろう者であることは、ルーベンの心を開いて、相互に絆を結ぶための大きな利点です

 

メンターの基本定義:人間的に信頼・尊敬でき、安心して相談できる人。

 

メンターの説明補足:一般的にメンターとは、私たちの中の無意識の能力を発見させてくれる人物であり、信念と価値観を自らの実例を通して強化してくれる人物です。私たちの奥深くにある何かに共鳴してそれを解き放ってくれることで、私たちの人生をポジティブに形成したり、ポジティブな影響を与えてくれるのがメンターです。

 

2.映画『ドント・ウォーリー』のAA(禁酒会)指導者・ドニー


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(1)指導者・ドニーの主人公との関わり

主人公のジョンアルコール依存症。ある日のこと、悪友が飲酒運転する車に自身も酩酊状態で同乗。そのまま事故に巻き込まれたジョン。以後、車いすの生活に。

 

ジョンはAA(禁酒会)の扉を叩き、指導者・ドニーと出会います。

ドニーも元は依存症患者。克服してAAの指導者になりました。

 

集会に初めて出席したジョンの前で、ドニーが自身の逸話を披露

「僕がこのプログラムを初めて受けた時、僕には2本のズボンがあった。ウンコ付きとウンコなし。どっちをはいているか気にもしなかった。でも、今日は人並みだった。朝起きてウンコなしのズボンをはき、コーヒーをいれて、おいしい一杯を飲んだ。ここで君たちに会うまでは、すばらしい一日だった(ドッと笑い)」

 

ドニーのユーモアトークに場の雰囲気がなごみました。この日はまだお試しだったジョン。AAの入会に気持ちが傾きます。

 

ジョンはドニーのグループトークへ参加

各メンバーが、それぞれ依存症にまつわる体験を語っていきます。話がヒートアップすると、参加者同士ののしり合うことも。その都度ドニーがなだめます。ジョンに順番がまわってくると、ジョンは孤児時代の辛い体験を話しました。

 

ドニーが言います「このグループの目的のひとつは、不必要な感情もあると気づくことにある。気づかないで一人でいると、悪い習慣に落ちてしまう」

 

ある日、ジョンはドニーに尋ねました

(ジョン)「なぜ参加者を子豚と呼ぶ?」

(ドニー)「子豚は臆病だが、勇敢で恐怖も克服できる」

ドニーがジョンに求めます。

(ドニー)「守るのは4つ。集会に出る。本を読む。禁酒する。飲みそうな時には電話する

 

ドニーが集会で語ります

(ドニー)「僕は神をチャッキーと呼ぶ。ホラー映画の主人公だ。でもその力を恐れているわけではない。ただ、その大きな力は予測不能だと気づいた。宇宙を支配しているのは我々ではないんだ。我々がいなくても支配は続く。誰かがいるから、助けを求められる。この概念を理解しよう。それはキリストでなくても、ブッダや女優でもいい」

 

(ドニー)「自分を捨てないと大きな力は見つからない

(ドニー)「信念にしがみつくな。神を信じろ。掃除しろ

 

ドニーがジョンとセッション

ジョンが見た公園の体操選手(幻覚)の話

 

(ジョン)「公園に体操選手が」

(ドニー)「来年はオリンピックだ」

(ジョン)「体が回復した頃からずっと見える」

(ドニー)「たぶん、禁酒に伴う幻覚だ。最初は救急病棟だったろ。何かが欲しいんだ」

(ジョン)「連中は何が欲しいんだ?」

(ドニー)「君に来て欲しいんだ」

(ジョン)「どこへ?僕を手招きしている」

(ドニー)「大空の大きな公園。天国から呼んでいる」

(ジョン)「ああ、それが怖い。行きたくないよ」

(ドニー)「連中に執着するな。集会に出て本を読め。集中してステップ2を。大きな力が君を正気に戻してくれる

(ジョン)「ああ、わかっているよ」

(ドニー)「それに君は体操はできないだろ(笑)」

(ジョン)「まったく、笑えるな(笑)」

 

ジョンがドニーに電話

ジョンが介護ヘルパーのティムと大げんか。ドニーに助言を求めました。

 

(ドニー)「君の問題を書いた紙を”神のバスケット”に投げろ

 

ジョンは問題を書いた紙を丸めて、”GOD”の札の付いたくずかごに放ります。が、大はずれ。それをティムが拾って投げ入れました。

 

ドニーがジョンとセッション

(ジョン)「俺が禁酒した日、肩に手を感じた。振り返ったら誰もいなかった。気のせいかと」

(ドニー)「実体がないんだ。目に見えないものさ。耳を澄ませても聴こえない。音のしない聞き取れないもの。手を伸ばしてもつかめない。捉えられない無形のもの」

(ジョン)「どうやって知る?」

(ドニー)「無になるんだ

(ドニー)「弱い人間ほど、強くなれる

 

ドニーの集会

ジョンが、母に捨てられ孤児となったこと、養父母に育てられたことを語ります。実子と違う育てられ方に違和感を持ち続けたジョン。あいつらを許さないと。

 

ドニーはジョンに、プログラムの9番目に取り組む時だと。

 

(ドニー)「それらの人たちに直接向き合って彼らを許すんだ

(ドニー)「君は毎日闘い、痛みは永遠に残るだろう。恥も永遠に残る。でも、闘わなければ死ぬんだ

 

ジョンは自分を捨てた母を許します。養父母のもとを訪ね、彼らに謝りました。また、ジョンを事故に巻き込んだデクスターを訪ねて「俺のことでずいぶん苦しんだろう」とデクスターをいたわりました。

 

ドニーがジョンとセッション

(ドニー)「因縁のある人を訪ねて、望みどおり許せた?」

(ジョン)「ああ、だから全部クリアになった。次はステップ10だ」

(ドニー)「君自身は?」

(ジョン)「何だって?」

(ドニー)「母親ばかりでなく、自分も許さないと。あの晩、デクスターと車に乗った自分を…」

 

ドニーがジョンとセッション

(ドニー)「酒はやめてる?」

(ジョン)「がんばってるよ」

(ドニー)「ステップは?」

(ジョン)「終了した。先週、報告しただろう」

(ドニー)「良かった。僕はステップ12が好きだ」

※ステップ12… 世の模範として善行を行える人間になり、宇宙の一部に戻る

 

(ジョン)「わかるよ。まだ自信がないけど、社会に還元したい」

(ドニー)「自分を許した?」

(ジョン)「たぶん」

(ドニー)「自分に何を許した?」

(ジョン)「かわいい娘を探すことを自分に許した(笑)」

 

この後、ドニーはアルコール依存症だった頃の話をジョンに語ります。わがままで酒浸りだった自分のこと。そうした自分から去って行った恋人のこと。

ジョンはドニーに「君は最高だよ。俺たち全員を助けてくれた」と心から感謝しました。ふたりは抱きしめ合います。

 

 

(2)メンターとしてのドニー

AA(禁酒会)の指導者ドニー。ドニーもジョンと同様、元は依存症患者でした。だからこそ、集会に来てくれた参加者への思い入れは強く、彼らに対する向き合い方は真剣そのもの。

 

またジョンが初参加した集会で、いきなりウンコ付きズボンの話を披露したドニー。

ドニーは、自分の辛い経験を笑い話に変えてしまいます。さらっと自己開示して、参加者の気持ちを惹きつけ、かつ、場を和ませてしまうドニー。

 

その一方、ジョンがケースワーカーのことを愚痴り続けていると、ドニーが厳しく叱責。ドニーは、優しさと厳しさの両面をうまく使い分けながら指導できます。『サウンド・オブ・メタル』のジョーも、ルーベンが施設の規則を破った際、ジョーは即刻、退去を命じました。

 

AA(禁酒会)・12ステップのプログラムに精通するドニー。グループワーク、個人セッションなど参加者に専門的なプログラムを提供できます。高度な専門性は、メンターの必須要素です。

 

何より優れた人間性が求められるメンター。そこが確立していないと、プログラムの信頼性が失われてしまいます。

ドニーのジョンとの対話場面を見ると、AA指導者の枠を超えて、依存症を克服して欲しいというドニーの強い願いが伝わってきます。

 

3.ふたりのメンターを比較・検討

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(1)ふたりのメンターの共通点6つ

サウンド・オブ・メタル』のジョー、『ドント・ウォーリー』のドニー。ふたりのメンターの共通点を挙げると、

 

優れた人間性 (支援される側の気持ちを何より大切に思う力)

利用者の抱える問題を克服した経験を持つ。いわばロールモデル

③辛い経験を含めて自分のことをオープンに語れる自己開示力

笑いやユーモアの価値を良く知っていて、場を和ませる力がある。

優しさと厳しさの両面を備える。その根底にあるのは、利用者の生活再建への強い願い。

⑥支援する者として高い専門性を持つ。

 

メンターの定義として、”人間的に信頼・尊敬でき、安心して相談できる人”とあります。

 

メンターとして、人間的に信頼・尊敬されるためには

やはり、何よりも人間性が大事です。また、自分を飾らず、自分の弱いところもオープンに話せる自己開示力も大切です。

 

さらに、安心して相談してもらうためには

支援における高い専門性があること、場に応じて笑いやユーモアを交えたコミュニケーションがとれること、こうした条件を備えることが重要であると、ジョーとドニーの在り方、振るまう姿から知ることができます。

 

(2)闘病のヒントを探る

患者の立場から、メンターについて考えます

患者支援を専門とするメンターは、今の日本では見つからないでしょう、残念ながら…。

しかし、メンターを望む患者さん、諦めないでちょっと周囲を見渡してみてください。「ああ、あの方が、きっと私のメンターだわ」という方もおられるのでは…。

 

例えば医療の場では、主治医、看護師、リハスタッフ、MSWなど。また福祉分野の、ケアマネさん、介護士さん、ソーシャルワーカーなどです。なかには、あのケアマネさんが私のメンターですと、はっきり言える方もおられるのでは。

 

また、専門職以外でも、闘病経験のある友人、過去に看護師経験のある近所のおばさまなどなど。

専門的な知識や特別な資格がなくても、笑いやユーモアなら負けない友人、過去の辛い体験を笑いに変えてしまえる近所のおばちゃんなどです

 

辛い気持ちをとことん聴いてくれるだけでも、その方はあなたのりっぱなメンターと言えます。でも、聴いてもらいっぱなしではなく、感謝の気持ちを言葉にして返すこともお忘れなく。

 

医療・福祉スタッフ側からメンターについて考えます

ふたりのメンターの6つの共通点から、患者側から見た医療・福祉スタッフの理想形が浮かんできました。それは、支援者が、病気や障害を抱えた人たちに接する際の大切なポイントです。

 

高い専門性は大前提でしょう。それに加え、笑いやユーモアを適切に使える力、自己開示する力気持ちの理解力生活再建を願う力を持つことが、患者さんや障害者さんへの対応力アップには大事な要素です。

 

医療・福祉スタッフの方の中には、ピアとしての経験をお持ちの方もおられるでしょう。

例えば、これまで難病やがんの闘病経験があり、克服して職場復帰を果たした方などです。そうした方の経験値は、医療現場、福祉現場でのお仕事に、本人が思っている以上にプラスの経験になります。強味、持ち味、魅力とも言えるストロングポイントなのです。

医療・福祉スタッフの方が、今回見つけたメンター6つの共通要素をちょっと気にかけて頂けるだけで、現場での仕事が生き生きとして、患者さんや障害者さんの笑顔となって帰って来るのではないでしょうか。

 

 

4.まとめ

今回は、過去記事の二つの映画から、ふたりのメンターに焦点を当ててみました。

ジョーとドニー、ふたりともとても魅力的なメンターです。

 

話をよく聴いてくれる。相談に乗ってくれる。問題・課題について共に解決の道を探ってくれる。何より、人として魅力的です。

 

この映画、このふたりをみて思ったことは、支援者としての技量、テクニックも大切ですが、それ以上に、人としてのあり方、人間性といったもの、言葉では簡単に言い表せない、目に見えないところが、メンターとしての一丁目一番地なのかもしれません。

 

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